みんなのスマイル・コンサート

取材・文 : 編集部

組曲《カルメン》の〈トレアドール〉に合わせて体を前後に揺すったり、《ラデツキー行進曲》に合わせて行進したり……。この日、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の生演奏を特別支援学校の子どもたちが体いっぱいに楽しんだ「みんなのスマイル・コンサート」が、茅ヶ崎市民文化会館で開催されました。

会場は多目的トイレの個数が多く、休憩室や親子室も完備。オーケストラピットは車椅子用の特別席に変わっていました。その席に向かうスロープは会館スタッフのお手製です。演奏中も客席の出入りは自由。歩いたり、声を出したりすることもOK。看護師が常駐するなど、安心できるサポートも手配されました。

鑑賞するだけでなく、ボディーパーカッションや合唱など参加型のプログラムも。なじみのある曲を中心に、学校でのいつもの過ごし方に配慮した、短時間のプログラム構成でした。企画担当者は「音楽に触れることが、個々の世界が広がるきっかけの一つになれば」と話します。

平塚支援学校に通う高校3年生の相川七海(ななみ)さんも、オーケストラの迫力と、合唱や手拍子を楽しんだそうです。「エレクトーンやピアノを習っているので、レッスンで弾いたことのある《ラデツキー行進曲》にものすごく感動しました。合唱曲《ビリーブ》も、知っている曲だから聴いていて気持ちがよかったし、楽しく歌えました」。音楽を鑑賞するのは「元気をくれる癒やし」だと相川さんは言い、今後はダンスも観てみたいと期待を語ります。

学校では、バスの手配、当日の動きの確認、医療的ケアの人員確保など様々な準備をしたそうです。また事前学習では、実際にヴァイオリンやチェロに触れてみたり、楽器に関するクイズをしたりしました。

担任の國武理佳先生も、コンサートを前向きに振り返りました。「障がいがある児童生徒にとって難しいのは長い時間静かに聴いていること。ホールでの本格的な演奏を、声を出したり、体を動かしたりしながら楽しめたので、すごくよい経験でした。鑑賞後も自分で曲について調べるなど、余暇の楽しみや学びにつながると思います。これからも継続して開催されることを期待しています」。

相川七海さん(左)と國武理佳先生(右) 写真 : 大野隆介
みんなのスマイル・コンサートのためにつくられた車椅子用スロープ

● 共生共創事業とは? ●

「ともに生きる ともに創る」を目標に、年齢や障がいなどにかかわらず、すべての人が舞台芸術に参加し楽しめる企画を実施することで、文化芸術の分野から「ともに生きる社会かながわ」の実現に寄与しています。2023年度は県立障害者支援施設「津久井やまゆり園」の利用者が影絵専門劇団「劇団かかし座」と影絵創作に挑戦する企画のほか、障害者サポート事業所での打楽器ワークショップや、多文化共生企画、シニア劇団やシニアダンスの企画など多数実施しました。


● みんなのスマイル・コンサート ●

神奈川フィルハーモニー管弦楽団演奏による、特別支援学校対象のコンサート。共生共創事業として神奈川県の主催で実施し、今後も県内の様々な地域で開催予定。2023年度は、会場周辺の5校の特別支援学校に通う児童生徒がクラシックの名曲に合わせて合唱や手拍子を楽しみました。

会場 | 茅ヶ崎市民文化会館 大ホール
日程 | 2023年9月12日
主催 | 神奈川県


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