やなぎみわ(美術作家/舞台演出家)

これからの県民ホールも、
アートセンターのような場になっていく

1990年代から『エレベーターガール』などの写真シリーズで注目を浴び、2010年代は演劇プロジェクトや野外劇、最新作では鉄作品のインスタレーションを手がけるやなぎみわさん。
美術家とは何かを問うように、型破りな表現に挑み続けてきたアーティストです。
県民ホールギャラリーでは2019年に、大規模個展「神話機械」を発表しました。

取材・文 : 編集部 写真 : やなぎみわ

―「神話機械」は国内5会場をめぐりました。県民ホールギャラリーでの展示はいかがでしたか。

空間が一番ダイナミックで面白かったです。各地の公立美術館って、独特のかたちがありますよね。でも県民ホールギャラリーはすごく劇場的な感じがして。神話を演じる4台のマシン『神話機械』を展示した吹き抜けで、一人芝居と音楽のライブパフォーマンスも行いましたが、空間のつくり方をほかの会場とはけっこう変えたんです。お客さんはバルコニーからも見下ろせるし、見え方が全然違うから。

福島の夜の果樹園で撮影した桃の写真作品『女神と男神が桃の木の下で別れる』を展示した部屋は、壁を黒く塗れたので県民ホールの展示が一番暗く、インスタレーションとしての完成度が高いものになったと思っています。

―KAATではやなぎさんの演劇作品の上演や、ステージトレーラープロジェクトのプロデュースも行っており、横浜とのゆかりが深いですね。

2022年に逝去された芸術総監督の一柳慧さんには、ほんとうに感謝しています。一柳さんのおかげで、面白い経験を今もさせていただいていて。その一つが2019年度に始まった大岡信賞の審査員です。一柳さんと審査会でご一緒できたのは一度きりでしたが、ほかの審査員はみな文学者のなか、貴重な経験になっています。美術作品は物語ではなく、詩に近いものだと思っています。大岡信さんも一柳さんも、美術や文学、音楽といったジャンルに垣根をもたない方でした。これからの県民ホールも、アートセンターのような総合的なものになっていくのでしょう。

—やなぎさんは横浜と同じく、港町の神戸生まれですね。

このエリアに来るとすごく懐かしいんですよ。トレーラープロジェクトで、舞台車が台湾から船で本牧ふ頭に入った時は感動しました。そこへトレーラーヘッドが迎えに行って、ドッキングして、KAATの前を通り過ぎて新港ピアに走っていく。港って、そういうダイナミックさ、荒々しさがあるじゃないですか。港町の気風は作り手としても魅力に感じるし、アートにも合っていると思います。

『女神と男神が桃の木の下で別れる』(2019年)
ライブパフォーマンス『MM』(2019年)
構成・演出 : やなぎみわ 出演 : 高山のえみ 音楽 : 内橋和久 写真 : bozzo 

やなぎみわ Miwa Yanagi

1993年エレベーターガールをテーマにした作品で初個展、以後国内外で個展多数。
2009年第53回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表作家。
2011年より演劇活動を開始し、近代美術の黎明期をテーマに美術館や劇場で公演、北米ツアーも果たす。
2019年個展「神話機械」が美術館巡回。台湾製の特殊車両による野外巡礼劇『日輪の翼』は、2016年横浜初演、2019年神戸では海上公演が実現した。
近年は台湾にて野外歌劇も作演出している。

オフィシャルサイト

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