「障がい者アート」などの冠を外して、障がいの有無に関係なく評価してほしい
「『障がい者アート』という言葉をなくす」――。
川崎市を拠点とし、障がいのある人たちのアート活動支援と経済的支援を行うNPO法人studioFLAT(スタジオフラット)の活動。所属アーティストの大槻蒼波さん、山内健資さんにも同席いただき、理事長の大平 暁さんにお話を聞きました。
聞き手・文 : 編集部 写真 : 大野隆介
─studioFLAT発足の経緯を教えてください。
美術の修士号取得後、障がい者施設で美術講師をしていました。転機はこだわりの強い男性との出会い。彼との向き合い方にずっと悩んでいました。ある日、自分が怪我しちゃって。すると彼が絆創膏を手に駆け寄って来たんです。アートを媒体に、通じ合えていたと気づきました。彼の作品を世に売り出したい。そう思っていた矢先に彼は早逝してしまって叶いませんでした。だから、障がいのある人たちのアート活動を支え、経済支援にもなる活動を始めました。
―生活介護事業所であり、地域にひらかれたアトリエとお聞きしました。どんな作品を制作しているのですか?
大槻さん(写真左)は花のような点描の抽象画を描きます。彼女は川崎市から依頼を受けたり、作品がグッズとして販売されたりと今ではエース作家です。山内さん(写真中央)は独自キャラクターを描く人。好きな動物を子どもに教えてもらって絵画にするワークショップも開きます。街の子どもからは「絵の上手なお兄さん・お姉さん」と思われているようです。絵画以外は、「さをり織り」があります。織り機を施設外に持ち出して、多様な人とともに織りました。素材は川崎市内の廃材です。2022年に県民ホールであった「オープンシアター2022」では、さをり織りを展示し、山内さんのワークショップも開きました。廃材も工夫すればアートになりますし、地域社会とのつながりも築けました。
—よりよい社会に向けて思うことは?
「障がいがあるから才能がある」と言われることもあります。しかし、絵画の良し悪しに障がいは関係ないはず。冠を外して、素直に作品が評価される社会になっていってほしいです。
大平 暁(おおだいら・さとる)
NPO法人studioFLAT理事長。
1971年生まれ、多摩美術大学絵画専攻修士課程修了。
障がいの有無にかかわらず、アート作品の魅力を「フラット」に見てもらう活動を続ける。
大槻蒼波(おおつき・あおば)
studioFLATアーティスト。
1998年生まれ。自身の内面世界を表す、花火のような作品を制作している。
色鮮やかで迫力のあるその作品は、毎日少しずつ丁寧に描き続け、積み重ねるようにしてできあがる。
山内健資(やまうち・たけよし)
studioFLATアーティスト。
1990年生まれ。オリジナルのストーリーとともに、ユニークで愛嬌のあるキャラクターを生み出している。
川崎市のノベルティーグッズや地域交流のワークショップなど、社会と関わった活動を行う。