2021年7月から9月に開催された「パビリオン・トウキョウ2021」へ企画段階から関わり、出展者として『ストリート ガーデン シアター』を発表した建築家の藤原徹平さんに、“劇場”と広場に関わりについて語っていただきました。
聞き手・文 : 山川 陸 写真 : 菅原康太
―『ストリート ガーデン シアター』は、どのように構想していったのでしょうか。
現代の都市って表面的にはきれいになったけれど、いろいろ隠されていますよね。かつては駅前も商店街も様々な人の訪れる雑多さのある「広場」で、そんな場所を改めてつくれないかと考えました。そこで、歌舞伎や能のような芸能が演じられることで特別な時空間がつくられてきた「道」をテーマにしました。ストリートは劇場の起源であり、またインフォーマルな「広場」です。オリンピックの期間、ここでパフォーマンスなどが自由に発表されたら面白いと思いました。
―新型コロナの影響で企画が延期され、藤原さんのパビリオンは「劇場のような道」から「植物と人のための劇場」へと変化しましたね。
都市から広場のような雑多さが消えている理由の一つは、人々があまりに速く動きすぎているからかもしれません。以前のように動き回れず家族と近所で過ごすなかで、外から何か持ってくるのではなく、自分のまわりを耕していくような時代が来ると感じました。そこで、土地に植物を生やし、メンテナンスし続けることで広場をつくることをテーマに変えました。毎日みんなで水やりをして、植物のことを考える。普段の仕事や打ち合わせもそこでして、リサーチをまとめたZINE(※2)をつくったり、様々な活動を見せることにしたんです。
―「劇場」としてつくってみて、まちの反応は?
きれいな都市公園ではなく雑多な裏庭のようにつくると、パッと見てすぐ帰る人もいれば、ずっとくつろぐ人もいます。終了後に育てた植物を配布したのですが、毎日見ていましたと声をかけてくれる人もいました。劇場も、その土地に根を生やすという感覚が大切で、公演がなくても動いていることを市民に見せていく必要があります。何となしにくつろいでいたら自然に文化に触れられてしまう「広場」が文化の多様さを下支えするのではないでしょうか。
※1
9名の建築家やアーティストが新国立競技場を中心とする複数の場所に建物やオブジェを設置し、自由で新しい都市のランドスケープを提案した。
※2
個人やグループにより自由な手法で自主制作される冊子。本企画では路上園芸の歴史、地域住民の聞き取りや写真等をまとめた。
藤原徹平[ふじわら・てっぺい]
1975年横浜生まれ。横浜国立大学大学院修士課程修了。2001年~2012年隈研吾建築都市設計事務所。2012年~横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。一般社団法人ドリフターズインターナショナル理事。建築設計のみならずアートプロジェクトにも多数関わる。