シリーズ「子どもと大人の音楽堂〈大人編〉」の第1回目として開催された「音楽堂のピクニック」。前川國男による名建築のなかで、様々な音の表現に出会う1日になりました。
ホワイエから客席、バックステージまで──。観客は音楽堂のあちらこちらを巡りながら、いくつものパフォーマンスを目撃していきました。企画をディレクションした小金沢健人さんは、本イベントでは「音楽堂を森に戻す」というコンセプトを立てたと話します。
「音楽堂は開館して70年近くたつ建物です。そのため長い時間のなかで、当初の建築の意図と現状が少しずつ変わってきています。例えば、音楽堂の隣にも、前川國男が手がけた神奈川県立図書館がありますが、2棟をつなぐ渡り廊下はかつて食堂だったそうです。現在は音楽堂の会議室として使用されていますが、図書館側はふさがれてしまっている。人が行き交う食堂としてデザインされた場所も、閉ざされているんです。それがまるで“倒木でふさがった森のなかの道”のように感じられて。大量の木を伐採してつくられた木造の音楽堂が徐々に崩れて、森の姿に戻りつつある──。それであれば、この場所の歴史をたどりながら『音楽堂を森に戻そう』と考えました」
音楽堂という森のなかで、ピクニックをするように音を楽しむ1日は、陽光の差し込むホワイエでの弦楽四重奏からスタート。サウンドアーティストの鈴⽊昭男さんと、ダンサーの宮北裕美さんによるパフォーマンスは、瓶や鏡といった身近なものから発せられる音とダンスの共演になりました。ホール内では、詩人・音楽家の志人(しびっと)さんの言葉と、作曲家・内橋和久さんによるダクソフォンやギター演奏のコラボレーションも。幻想的なアイヌ影絵は、会場全体を使った大規模なプロジェクションに、アイヌの伝統歌の歌唱も加わり、観客を魅了しました。「音楽堂のピクニック」は2023年3月4日に2回目の開催も予定されています。
出演
カルテット・シエル/邦楽創造集団オーラJ/志⼈×内橋和久/鈴⽊昭男・宮北裕美/FUJI│││││││││││TA/芳垣安洋・⽯若 駿 feat. 象眠舎/アイヌ影絵:ほしふね[⼩⾕ 野哲郎・わたなべなおか]・アペトゥンペ[Rekpo(レクポ)・Mayunkik(i マユンキキ)]/渋⾕ 毅
ディレクター
Kenji “Noiz” Nakamura /小金沢健人
日程 | 2022年3月19日(土)
会場 | 神奈川県立音楽堂 主催 | 神奈川県立音楽堂
- 土地の物語
- 作曲家・團 伊玖磨―土地から湧き出る音楽
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- 子どもと大人の音楽堂〈大人編〉音楽堂のピクニックREPORT