本コーナーでは、公演の延期を余儀なくされた演出家や、地域に根ざした番組を制作するテレビ局、国際的にも注目される展覧会を実施する組織など、演劇や、音楽、美術、エンターテインメント、そして教育、と幅広い分野の方々から取り組みを聞きました。どんな困難と向かい合い、歩みを止めなかったのか。神奈川県内での5つの現場の声をお届けします。
- コロナ禍でのあゆみ ―5つの現場から―
VOICE 2
テレビ神奈川
2022年に開局50周年を迎えるテレビ神奈川(tvk)では、プレイベントを実施しようという矢先に新型コロナが流行し、イベントは軒並み中止に。通常の収録やロケもできず、再放送を余儀なくされました。そのなかで盛り上がったのが、横浜DeNAベイスターズ戦の過去の中継映像をふりかえる番組です。当時の実況と解説の音は活かしつつ、生放送でアナウンサーとゲストがチームにまつわるトークをし、見応えのある試合をもう1回楽しむ構成で、Twitterのトレンドワード全国1位になるなど大きな話題になりました。ほか、神奈川県の黒岩知事が頻繁に生放送に出演して県民の質問に答えたり、緊急事態宣言により休校中の小中学生の授業を放送することで、インターネット環境がない児童や生徒も授業が受けられるようにするなど、地域への貢献にも努めました。1994年に入社し、2020年のコロナ禍に代表取締役社長に就任した熊谷典和さんにお話を伺いました。
聞き手・文 : 河野桃子
─コロナ禍により、エンターテインメントの発信にも影響がありましたね。
「こんな時だからテレビで元気を」という声もあり、葛藤しました。エンタメは娯楽でもあるし、和みを与えたりもします。ロケ番組の代わりに、楽しい過去映像を再放送するといった工夫をしました。特に人気だったのが、野球の試合です。過去の中継映像の再放送は、試合ができなかったコロナ禍だからこそ思いついたアイデアでした。SNSで「ピザを食べながら逆転劇を見て盛り上がりました!」などの声をいただきました。もちろんリアルタイムでの観戦にはかなわないですが、SNSとテレビがどうやって一体感を出していくかを意識しました。
─県内のエンターテインメントをリードする企業として、役割や目標は?
ローカルテレビ局は、番組とイベントを連動させて県民の皆さんに番組を身近に感じていただくことが大切です。イベントを開催することでより親しみをもっていただきたい。一方でライブや公演を開催するには、ホールの方、観客、主催者など皆が一体にならないと実現することができません。tvkとしては、CM放送などの広報的な支援で少しでもお役に立てるようにサポートしています。50周年では多くのイベントに取り組み、盛り上げていきたいですね。
株式会社テレビ神奈川(tvk)
神奈川県の独立局であるローカルテレビ局。県内ニュース、横浜DeNAベイスターズ中継などのスポーツはもちろん、各種イベントなども多数展開。地元の情報を伝えることに力を入れ、地域情報バラエティ番組「猫のひたいほどワイド」や音楽情報バラエティ番組「関内デビル」など独自の番組制作も行っている。2022年4月に開局50周年を迎える。周年コンセプトは「感謝のカタチ」。
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