海や里山といった自然環境と、商業施設などの都市機能がバランスよく共存し、約24万人が暮らす茅ヶ崎市。2023年10月、この街に初のコミュニティFM「茅ヶ崎FM(通称 : エボラジ)」が開局しました。スタジオは、茅ヶ崎市役所と広場に隣接したガラス張りの平屋です。道行く人たちが、ラジオブースから流れる音に耳を傾け、生放送の様子を眺めることができる好立地。茅ヶ崎FMのメインD J・宮治淳一さんと、スタッフの池原正洋さんにお話を伺いました。
取材・文 : 編集部
「海と音楽のまち」として知られる茅ヶ崎ですが、藤沢や平塚などほかのエリアと比べると、実はコミュニティFM局がなかなか開局されなかった地でもあります。茅ヶ崎FMの発起人であるDJの宮治さんは「いつかできるだろうと思っていたんです。でも日本で初めてコミュニティFMが開局して四半世紀以上経っても、茅ヶ崎にはできなかった。この街には音楽家がたくさんいます。その音楽を伝えられる最高のメディアがラジオだとしたら、コミュニティFM局がないのは寂しい。いろいろな人に声をかけ、自分なりに可能性を探っていくなかで、地域貢献施設を建設予定だったこの場所とめぐり合ったんです」と振り返ります。
茅ヶ崎で暮らす人たちに向け、どんな情報をどのように届けていくか。立地上、津波など災害に対する意識も高い茅ヶ崎で、FM局としても災害時の情報発信には特に力を入れています。県立茅ケ崎支援学校が実施した、障がいのある子どもたちが、災害時に体育館に宿泊することを想定した避難訓練を、生中継したこともありました。「実際に重度の障がいのある人が身近に住んでいたときに災害が起きたらどうするのか。知っておくことが、行動につながります」とスタッフの池原さんは話します。
また、もう一つ大切にしているのが「子どもたちの未来」です。茅ヶ崎FMのスタジオ横には、誰でも気軽に来られるカフェが併設されています。「ラジオを放送している様子を実際に見ると、あそこにあるんだという実感がもてる。そして、家でも聴いてみようとつながればうれしいですね」と池原さん。また今後は、サーファーの粂浩平さんの番組と連携し、パドリングのレッスンを広場の芝生で開講したり、隣接カフェでミニライブや公開収録を実施したりといった、リスナーと直接交流がもてるイベントも企画しているそうです。
宮治さんは「市民のためのFM局として、広場のように開いておきたい」と話します。「番組にも、一般市民の方がたくさんゲストで出てくれているんですよ。そうすると、これは自分たちのFMなんだと思ってもらえて、聴く習慣ができる。いざ災害が起こったときにも、すぐにダイヤルを合わせてもらえる。それがコミュニティFMの使命であり、緊急時にきめ細かい情報が届くことにもつながります」。
ラジオは、映像が伴わないからこそ、「人間の声」で話す言葉がもつパワーが、ダイレクトに伝わるメディアでもあります。皆さんの地元にもコミュニティFMがあれば、ぜひ聴いてみてください。