オルガン・アドバイザー中田恵子に聞く
C×O r g a n の魅力

C×Organ オルガン・コンサート・シリーズ
聞き手・文 : 猪上杉子

県民ホール「C×(シー・バイ)」シリーズから、Composer・Classic・Contemporaryの3つの「C」とオルガンがクロスする「C×Organ(シー・バイ・オルガン)」について、オルガン・アドバイザーを務める中田恵子さんを紹介します。2021年4月の就任以来、中田さんは「C×Organ」のコンセプトに沿ったコンサートの企画・監修を担っています。

「企画することは大好きですが、『C×Organ』のコンセプトのComposer(作曲家)への委嘱やContemporary(現代曲)という課題に応えるのはなかなか大変でした。それに加えて県民ホール・スタッフからはフランス音楽を取り上げてほしいとの希望もあり、頭を悩ませました。ドイツ製のオルガンなのでこれまではドイツ音楽が演奏されることが多かったのです。考えた結果、私自身のリサイタル(2021年10月9日)では、フランスの作曲家を中心に17世紀から現代までの7人のオルガン音楽を取り上げ、Classic(クラシック音楽)の源泉であるグレゴリオ聖歌をテーマに作曲家の鈴木純明(じゅんめい)さんに委嘱して初演も行いました。かなり冒険的なプログラムでしたが、『初めて聴く曲ばかりだったのに面白く、まったく飽きなかった』という感想もいただきました。」

また、年間を通して定期的に開催しているプロムナード・コンサートにも、中田さんならではのアイデアを加味しています。

「メシアン(没後30年のフランスの作曲家)をプログラムに1曲は取り入れていただくようにと、出演するオルガニストの方々に依頼しました。メシアンのオルガン曲を聴いたことがない方も多いかと思いますが、『プロムナード』で触れる機会をもつことで、オルガン音楽の奥行きの深さを知っていただきたいとの思いからです。」

「C×Organ」オルガン・コンサート・シリーズの楽しみ方について伺うと──

「オルガンは神に祈りを捧げる楽器としての古い歴史があります。オルガン曲を書く時に作曲家たちが込めた平和を願う気持ちを、昨今の状況下では強く感じます。現代にこそ必要とされる、そうした力も感じられるのがオルガン音楽の特別な魅力だと思います。」

今後も様々に展開される「C×Organ」で、最も古くて最も新しい魅力をもつ響きに浸ってみては。

公式サイト

写真:大野隆介
写真:大野隆介

中田恵子[なかた・けいこ]


東京女子大学、東京藝術大学オルガン専攻卒業、同大学院修士課程修了後に渡仏、パリ地方音楽院演奏家課程を最優秀の成績で修了。アンドレ・マルシャル国際オルガンコンクール優勝。併せて現代曲解釈に秀でたとして Giuseppe Englert 賞を受賞。日本基督教団鎌倉雪ノ下教会、玉川聖学院オルガニスト。2021年4月に神奈川県民ホール オルガン・アドバイザーに就任。オルガン・コンサートの企画や監修、出演を務めている。鎌倉市在住。


県民ホールのオルガンはどんな楽器?

1975年1月の開館時にドイツのヨハネス・クライス社により設置。日本で初めて公立ホールに設置されたパイプオルガン。433席の小ホールの舞台上に設置されており、オルガニストの演奏を間近に見聞きすることができる。バロック時代から現代まで、幅広いオルガン音楽に対応できる30種のストップ(音色を選択する仕組み)を備え、パイプ数は2024本。


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