4.長塚圭史『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』

KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾
『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST ~』
上演台本・演出 : 長塚圭史(原作 : 呉承恩『西遊記』)初演 : 2022年2月

登場する場所…大山 (伊勢原市、秦野市、厚木市)

大山は神仏習合の山岳信仰の強い山です。

死者との再会を願いながら大山寺と大山阿夫利神社で一心に願うと、
その心願が成就すると言われています。

ただ雲に乗ってビュンというのではなく、
しっかりと歩いて行かなければなりませんよ。

―『冒険者たち 〜JOURNEY TO THE WEST〜』から

神奈川県内の各劇場を巡る「KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト」第一弾として、芸術監督の長塚圭史が上演台本・演出を手がけた作品。神奈川県内各地を回った本作は、天竺を目指しているはずの三蔵法師一行がなぜか現代の神奈川県に迷い込んでしまうところから始まります。孫悟空たちともはぐれ、空腹でさまよう三蔵法師は鶴見でなぜか大蛇退治に参加することに。ところがそれは大蛇ではなく、三蔵法師の愛馬・玉龍でした。再会した三蔵法師と玉龍は県内を西へ。Uber Eatsで生計を立てながら女と同棲していた沙悟浄を何とか連れ戻し安心したのも束の間、今度は影取池のウワバミに影を取られてしまった三蔵法師が死の危機に瀕します。

横須賀でスカジャンの刺繍職人として働いていた悟空も師匠のピンチを知り、合流。江の島で市杵島姫(いちきしまひめ)の、小田原で二宮金次郎の知恵を借りてようやく影を取り戻しますが、三蔵法師の心臓は止まったまま。生き返らせるためには県内屈指の霊山・大山で死者との再会を願わなければなりません。悟空らが大山阿夫利神社で一心に拝むと大山祇神(おおやまつみのかみ)が現れ、三蔵法師は無事に現世に戻ったのでした(この間ずっと、猪八戒は県内各地のグルメを食べ歩いていました)。一行はあらためて天竺へ向かおうとするも、なんやかんやと悟空らは県内各地へ再び散り散りに。神奈川の旅はまだ続きそうです。

(批評家・ドラマトゥルク 山﨑健太)



大山寺と大山阿夫利神社で拝む一行。これまでの楽しげな雰囲気が一転し、劇は終盤に向かう 写真 : 宮川舞子

KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト創作のプロセス

KAATのことをもっと多くの県内の方に知ってもらいたいという長塚監督の思いから始まった「KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト」。県内東寄りに位置するKAATから西へと向かうツアー公演の旅程を、西遊記の道中に重ねては、というアイデアから本作は生まれました。ツアー先の劇場の下見も兼ね、2021年の春から県内各地でのリサーチはスタート。長塚監督は箱根駅伝のルートを実際にたどったり、神奈川県立歴史博物館で資料にあたったりしながら執筆を進めたそうです。

公式サイト



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