登場する場所…大山 (伊勢原市、秦野市、厚木市)
大山は神仏習合の山岳信仰の強い山です。
死者との再会を願いながら大山寺と大山阿夫利神社で一心に願うと、
その心願が成就すると言われています。
ただ雲に乗ってビュンというのではなく、
しっかりと歩いて行かなければなりませんよ。
―『冒険者たち 〜JOURNEY TO THE WEST〜』から
- 土地の物語
- 1.獅子文六『やっさもっさ』
- 2.有島武郎『或る女』
- 3.川端康成『山の音』
- 4.長塚圭史『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』
- 作曲家・團 伊玖磨―土地から湧き出る音楽
- 物語が生まれる場所
- 子どもと大人の音楽堂〈大人編〉音楽堂のピクニックREPORT
神奈川県内の各劇場を巡る「KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト」第一弾として、芸術監督の長塚圭史が上演台本・演出を手がけた作品。神奈川県内各地を回った本作は、天竺を目指しているはずの三蔵法師一行がなぜか現代の神奈川県に迷い込んでしまうところから始まります。孫悟空たちともはぐれ、空腹でさまよう三蔵法師は鶴見でなぜか大蛇退治に参加することに。ところがそれは大蛇ではなく、三蔵法師の愛馬・玉龍でした。再会した三蔵法師と玉龍は県内を西へ。Uber Eatsで生計を立てながら女と同棲していた沙悟浄を何とか連れ戻し安心したのも束の間、今度は影取池のウワバミに影を取られてしまった三蔵法師が死の危機に瀕します。
横須賀でスカジャンの刺繍職人として働いていた悟空も師匠のピンチを知り、合流。江の島で市杵島姫(いちきしまひめ)の、小田原で二宮金次郎の知恵を借りてようやく影を取り戻しますが、三蔵法師の心臓は止まったまま。生き返らせるためには県内屈指の霊山・大山で死者との再会を願わなければなりません。悟空らが大山阿夫利神社で一心に拝むと大山祇神(おおやまつみのかみ)が現れ、三蔵法師は無事に現世に戻ったのでした(この間ずっと、猪八戒は県内各地のグルメを食べ歩いていました)。一行はあらためて天竺へ向かおうとするも、なんやかんやと悟空らは県内各地へ再び散り散りに。神奈川の旅はまだ続きそうです。
(批評家・ドラマトゥルク 山﨑健太)
KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト創作のプロセス
KAATのことをもっと多くの県内の方に知ってもらいたいという長塚監督の思いから始まった「KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト」。県内東寄りに位置するKAATから西へと向かうツアー公演の旅程を、西遊記の道中に重ねては、というアイデアから本作は生まれました。ツアー先の劇場の下見も兼ね、2021年の春から県内各地でのリサーチはスタート。長塚監督は箱根駅伝のルートを実際にたどったり、神奈川県立歴史博物館で資料にあたったりしながら執筆を進めたそうです。
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