本コーナーでは、公演の延期を余儀なくされた演出家や、地域に根ざした番組を制作するテレビ局、国際的にも注目される展覧会を実施する組織など、演劇や、音楽、美術、エンターテインメント、そして教育、と幅広い分野の方々から取り組みを聞きました。どんな困難と向かい合い、歩みを止めなかったのか。神奈川県内での5つの現場の声をお届けします。
- コロナ禍でのあゆみ ―5つの現場から―
- 1.『未練の幽霊と怪物—「挫波」「敦賀」—』岡田利規インタビュー
- 2.テレビ神奈川(tvk)
- 3.ヨコハマトリエンナーレ2020
- 4.神奈川フィルハーモニー管弦楽団
- 5.神奈川県立湘南高等学校合唱部
VOICE 5
神奈川県立湘南高等学校
合唱部
2020年2月の神奈川県合唱フェスティバル(音楽堂)への参加から半年間、リアルな場に集まって練習ができなかった湘南高校の合唱部。発表会の再開は、さらに7ヶ月後の2021年3月でした。練習の再開当初も人数制限があったため、部員全員(70~80名)が一つの部屋に集まることはかないません。複数の部屋に分かれたり、屋外でも練習をしました。マスクをつけて歌うことも、苦労が伴うものでした。部員同士の対話がSNS中心となったためコミュニケーションのすれ違いも経験することに。一方で、「バーチャル開放区2020」(1)への応募は一つの転機になりました。できることをやろうと取り組んだ作品がみごと入選を果たし、部員たちに連帯感が生まれるきっかけになったのです。今回の取材では、湘南高校合唱部顧問の岩本達明(いわもとたつあき)先生と、2年生で部長を務める小林颯(こばやしはやて)さんにお話を聞きました。
聞き手・文 : 編集部 写真 : 大野隆介
―海外の合唱団との交流も盛んに行われていましたが、2020~2021年度は実現が難しかったですね。
岩本
楽しみにしていた演奏会がなくなり、生徒たちはつらかったと思います。卒業する3年生は、最後のコンクールも中止で心のダメージも大きかった。Zoomの活用は、そんな思いを語り合うことから始めましたね。「音楽を続けたい」生徒たちの発案で、Zoomで練習をしたり、インスタライブをしたりもしましたが、オンラインだと音のズレがあるため一緒に歌うことは難しい。
―2020年4月入部の小林さんにとって、コロナ禍はどのような時期でしたか。
小林
活動が何もできないところからのスタートでした。みんなで歌えた時は、その分喜びが大きかったです。発表会は、歌う側もお客様もほんとうに楽しそうで。客席には泣いている方もいました。機会が限られているからこそ、合唱の素晴らしさを強く感じた2年間になりました。
岩本
コロナ禍では、先輩と後輩の上下のつながりなど、いろいろなものが切れてしまいました。それでも活動を止めてしまうと、再開するエネルギーすらわかないんじゃないかな。「バーチャル開放区」への応募では、初めての映像編集でしたが熱心にチャレンジして。このようにその時できることを、細々とでもやり続けることがステップになると感じました。
神奈川県立湘南高等学校合唱部
2021年、神奈川県立湘南高等学校は100周年、合唱部は創部75周年を迎えた。合唱部はこれまでに数多くの音楽家を輩出している。2022年3月27日に、創部75周年を記念した春の定期演奏会を、鎌倉芸術館大ホールにおいて開催。